香港で開催しましたグローバル・マクロ・カンファレンスでの岸田文雄内閣総理大臣からのビデオメッセージの全文を紹介します。
内閣総理大臣の岸田文雄です。
今回、グローバル投資家の皆様が集まる 、アジア最大級のカンファレンスであるグローバル・マクロ・カンファレンスにメッセージをお送りする機会をいただきありがとうございます。
日本政府は官民の連携により、社会課題を成長のエンジンに転換する新しい資本主義を据えています。その結果として、昨年は賃上げ、投資、株価など様々な指標において30年ぶりの高い水準となりました。
日本に四半世紀にわたる低成長・デフレ環境から完全脱却する千載一遇のチャンスが巡ってきています。このチャンスをつかみとり、国民の所得増と成長の好循環による新たな経済へ移行するため、物価高を上回る賃上げを実現すると同時に、半導体をはじめとした戦略分野の国内投資促進を通じて、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化していく方針です。
経済活動の基盤である金融資本市場はこうした国民の所得増と成長の好循環を実現する上でも重要な役割を果たします。我が国の家計金融資産2100兆円超の半分以上を占める現預金が投資に向かう。その資金が企業の成長投資に回って企業価値が向上する。その恩恵が家計に還元されることで、さらなる投資や消費につながる。こうしたインベストメントチェーンの資金の流れを創出するため金融資本市場の変革に取り組みます。
そのため、まずこの1月から、新しいNISA(少額投資非課税制度)を開始しました。非課税枠を抜本的に拡充・恒久化し、貯蓄から投資へのシフトを進めることで、日本の個人金融資産を国民所得の伸びと企業の稼ぐ力の向上にフルに活かしたいと考えています。
こうした投資の流れを確かなものにするためには、投資先の企業の魅力を高める必要があります。コーポレートガバナンス改革によって賃上げを含む人的資本への投資拡大を促進し、上場企業の中長期的な価値向上を図ります。
今月、東京証券取引所において、PBR(株価純資産倍率)などの市場評価や資本コストを意識した経営の実現に向け対応を進めている企業の「見える化」を開始しました。政府としても、これに基づき上場企業と投資家との間で積極的な対話が行われるとともに、こうした取り組みがさらに拡大するよう東証の取り組みを後押ししてまいります。その上で、インベストメントチェーンの残されたピースとして、家計金融資産等の運用を担う資産運用業とアセットオーナーシップの改革を進めます。資産運用業における日本独自のビジネス慣行や参入障壁を是正し、国内外の優れた事業者による新規参入を促進するとともに、意欲ある自治体と連携して、金融資産運用特区を創設し、ビジネス環境と生活環境を重点的に整備してまいります。国・自治体による支援や、規制の特例措置等について、本年6月をめどに特区のパッケージを策定します。また、アセットオーナーシップの改革をはかるため、受益者に適切な運用の成果をもたらすよう、アセットオーナーに求められる役割を明確化した「アセットオーナー・プリンシプル」を本年夏をめどに策定します。
さらに、我が国経済のダイナミズムと成長を促すためには、イノベーションを創出し企業の生産性向上をもたらすスタートアップに成長資金を供給し育成することが重要です。そのためには、国内外の機関投資家の資金がベンチャーキャピタルを通じて国内のスタートアップ企業に供給される流れを拡大していく必要があります。ベンチャーキャピタルのガバナンスを向上させ、機関投資家がよりベンチャーキャピタルに出資しやすい環境を創っていくため海外での実務も参考にしつつ、ベンチャーキャピタル向けの行動規範・プリンシプルを策定してまいります。
こうした変革の取り組みを世界の投資家の皆様と対話を行いながら大胆に進めていくため、投資家の皆様にご参加いただける資産運用フォーラムを開催することとし、昨年末準備委員会を立ち上げました。本日のカンファレンスに参加されている皆様ととも、今年東京で開催される予定のフォーラムでお会いできることを楽しみにしています。
今年は日本経済が低成長・デフレに後戻りするか、新しい経済ステージに向かうかの正念場です。政府としては、日銀と密接に連携し、経済・物価情勢に応じて機動的な政策運営を行いながら、物価上昇を上回る賃上げを実現し、これまで述べてきた金融資本市場の変革を含め政策を総動員して新しい経済ステージに移行する日本の姿を皆様にお見せしたいと思います。
本日はありがとうございました。
Our weekly newsletter with insights and intelligence from across the firm
By submitting this information, you agree to receive marketing emails from Goldman Sachs and accept our privacy policy. You can opt-out at any time.